こんにちは!現役で理学療法士をしているひよこです🐣
ひよこ🐣は新人のとき、だいぶポンコツ療法士でした。
そんなひよこ🐣でも半側空間無視という言葉は知っていましたが、病態・治療を全く理解してませんでした。
最初に担当した半側空間無視の患者様は「ひたすら左を気にしてもらう!」が治療でした。
など、半側空間無視の知識が曖昧で、ひよこ🐣と同じ悩みを抱えている方必見です!
この記事では以下の4点について深掘りしています。
半側空間無視の疫学
右大脳半球損傷で左半側空間無視が起きやすい原因
背側注意ネットワーク、腹側注意ネットワークの働き
半側空間無視の治療のアイディア
この記事は↑の本を参考にしています。
ココに注意
・新人さんには難しすぎる
・読むのに根気がいる
ココがおすすめ
・脳機能のいろはが書かれている
・理解できれば中堅セラピスト以上の知識が手に入る
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・月額料金がかかる
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半側空間無視ってなに?
半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect:以下USN)とは空間に対して方向的に注意を向けることが障害されます。
自身の左側に気づけなくなる、物の左側を見落としてしまうといった具合ですね。
USNの特徴です。
ポイント
右半球損傷に好発(50%)するので左無視が起きやすい
左半球損傷でも右USNを呈するが、右USNより左USNが重度・長期化しやすい
1年以上、USNが残存するのは10~15%程度
USNの残存はADL自立、転倒に関連している
長期化することも、改善することもあるといった感じですかね!
その違いは、このあと深掘りします。
代表的な机上検査ではBehavioural inattention test(BIT)があります。
検査はどれも左側を無視したような結果になっていますね!
なんで右半球損傷で半側空間無視が起きやすいの?
大脳半球はそれぞれ右と左で相互に抑制していてバランスよく働けるようになっているとされています。
これを半球間抑制といいます。
片方の大脳半球が損傷してしまうと、損傷した半球からの抑制が弱くなってしまうので、損傷していない大脳半球が強く働きます。
損傷していない大脳半球が強く働くということは反対の大脳半球への抑制も強くなるということです。
空間処理の働きは左半球は右視野を、右半球は左右両方の視野を処理するとされています。
ここまでの情報で何となく、左USNの原因がわかった方は鋭いですね(笑)
右半球が損傷されると左大脳半球から右半球への抑制が強まります。
右半球は両方の空間処理をしていますが、左半球は右への空間処理だけを担っているので右半球損傷では左空間は認知されにくくなります。
左半球が損傷しても右半球が両側の空間処理をできるのでUSNは起こりにくいと言えそうですね。
どんなときに無視が起きやすいの?
無視がどんなときに起きてしまうかは症状の重さによって変化するので一概には言えません。
しかし、見ている情報によって無視が起きやすいこともあります。
左USNの患者様は左の写真では視線が健常者と比べて右へ向きやすいです。
右の写真では左USNの患者様でも健常者と同じく視線はやや左へ向くようです。
これは写真の中の情報量の違いだと考えられます。
左の写真は特に目立つものが映っていませんが、右の写真は赤い線が際立っていますよね。
このように情報量によって無視が起きやすかったり、無視側へ視線が向きやすいこともあります。
まず、左へ視線が向くかの評価は必要だとひよこ🐣は考えます。
上の図だと左の〇を見ることができるか評価するのもいいかもしれません。
視線を無視側へ向けられないと物事に気づきようもないですからね💦
左の〇を見ることができたら情報量を増やして、視線が右に偏ってしまわないか?といった具合に難易度を設定してみるのもいいですね!
もし、左USNが出現するのであれば〇をその患者様の好きなものに変えてみるのもポイントです。
〇の代わりにお孫さんの顔、お酒やお金といった具合ですね。
探索課題はボタンよりもお金を使った方が成績がよかったとされています。
価値や嗜好が空間無視に変化を与えるということですね!
半側空間無視にタイプ分けってあるの?
半側空間無視は病巣によって、症状にも変化が生じます。
今回は半側空間無視を病巣、症状で大きく2つにタイプ分けして説明します。
知覚・視覚性の無視
対象・物体中心の無視
急に難しい言葉でびっくりしますね😅
知覚・視空間性の無視は自分の身体から左を無視してしまう症状です。
学生のときに無視と言ったらひよこ🐣はまずこれをイメージしていました。
頭頂葉の障害によりUSNが出現するときにこのような症状が出現します。
物体中心の無視は物の左側を無視してしまう症状です。
コップの赤マーカー部分を無視してしまうイメージですね。
側頭葉の障害によりUSNが出現するとこのような症状が出現します。
知覚・空間性の無視は右側、物体中心の無視は左側のような検査結果になっています。
たとえば
4枚のお皿が目の前にある食事場面をイメージしてみましょう。
ポイント
知覚・視空間性の無視:左側2枚のお皿を食べ残してしまう
物体中心の無視:全部のお皿に手を付けるが左側は食べ残してしまう
ADL場面ではこのような違いが出ると考えられます。
背側注意ネットワーク、腹側注意ネットワークってなに?
USNのタイプ分けをもう少し深掘りします!
人間には注意に関して2つのネットワークがあると言われています。
背側注意ネットワーク
腹側注意ネットワーク
この2つですね。
上の図の左側が背側注意ネットワークの働きになります。
PCの作業に集中して取り組んでいるところですね。
背側注意ネットワークは選択的に注意を持続する役割があります。
上の図の右側は腹側注意ネットワークの働きになります。
PCの作業中に同僚に話しかけられて同僚の方を向くところですね。
腹側注意ネットワークは際立った刺激に対して注意を転換する役割があります。
同僚に話しかけられて、そのまま会話を続けると会話に注意が持続することになるので、背側注意ネットワークが働くことになります。
背側注意ネットワークと腹側注意ネットワークは相互的に働いていることが分かりますね!
背側注意ネットワークは青い場所でネットワークができています。
左右両方の脳が背側注意ネットワークでは働いていますね。
腹側注意ネットワークはオレンジの場所でネットワークができています。
右の脳の働きが腹側注意ネットワークでは中心となっています。左は行為(失行)に関わっているためですね。
背側注意ネットワークと腹側注意ネットワークはUSNと関係あるの?
背側注意ネットワークと腹側注意ネットワークはUSNと関係があります!
上縦束って知ってますか?
新人ひよこ🐣は知りませんでした(笑)
同じ大脳半球の前後をつなぐ神経繊維ですね。
背側注意ネットワークは上縦束Ⅰと関わっています。
上縦束Ⅰは上の図で赤い経路のところですね。
腹側注意ネットワークは上縦束Ⅲと関わっています。
上縦束Ⅲは上の図で緑の経路です。
黄色の経路は上縦束Ⅱで、背側注意ネットワークと腹側注意ネットワークをつなぐ役割があります。
USNは注意ネットワーク障害です。左空間に注意が向かなくなり、左USNが起きてしまいます。
また、上縦束の損傷でUSNが起きてしまうことは研究で分かっています。
と、気づいた方は非常に鋭いですね!
上縦束の損傷される場所、症状によってUSNはタイプ分けできると考えられます。
半側空間無視のタイプ別の治療
背側注意ネットワークと腹側注意ネットワークの働きに関しては前述させていただいたので、ここからは治療について説明します。
背側注意ネットワークの治療
背側注意ネットワークは能動的に注意を持続する働きがあり、左USNでは左空間へ注意を向けることが困難になると説明しました。
経路としては上縦束Ⅰが背側注意ネットワークと関わっています。
そのため、能動的に左空間に注意を向けることが治療となります。
麻痺側上下肢の使用を促す、基本動作訓練で左へ注意を向けるように促すなどですね。
と思う方も多いでしょう。
その通りです、普段やっている治療が背側注意ネットワークの治療となります。
学生のときは「USNの治療はプリズム眼鏡だよ!」とひよこ🐣は習いました。
プリズム眼鏡はかけると視線が右に偏位します。
そのため、物に手を伸ばすと右にずれてしまいます。
ずれを修正するのに左の探索が必要となり、USNの治療となります。
能動的に探索を促すのでプリズム眼鏡は背側注意ネットワークの治療と言えます。
腹側注意ネットワークの治療
腹側注意ネットワークは際立った刺激に対し注意を転換する働きがあり、
左USNでは左空間の際立った刺激に注意を向けることが困難になると説明しました。
経路としては上縦束Ⅲが腹側注意ネットワークと関わっています。
そのため、課題中にポインターを使って急に注意を左へ向けるなど注意を転換する治療が必要になると考えられます。
病棟での生活、リハビリでの麻痺の治療や基本動作訓練などではなかなか改善しなさそうですよね?
また、背側注意ネットワークは両側の大脳が働きますが、腹側注意ネットワークは右半球の働きによるものが大きいです。
生活・リハビリで働きにくいこと、右半球の役割が大きいことから
腹側注意ネットワークの損傷によるUSNは予後が不良で、症状が残存しやすいと言われています。
まとめ
まとめです!
半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect:USN)とは空間に対して、方向的に注意を向けることが障害されることです。
・右半球は両方の空間処理をしているが、左半球は右への空間処理だけを担っている
・右半球損傷では左空間は認知されにくくなる
。右半球損傷の50%に左USNが起きると言われている
人間には注意に関して以下の2つのネットワークがあると言われています。
ポイント
・背側注意ネットワーク:選択的に注意を持続する役割
・腹側注意ネットワーク:際立った刺激に注意を転換する役割
治療は以下のように考えられます。
背側注意ネットワーク→能動的に左空間に注意を向けることが治療
腹側注意ネットワーク→左空間へ注意の転換を促すことが治療
いかがだったでしょうか?
今回は【これを覚えればOK!】半側空間無視のタイプ分けとリハビリテーションでの治療についてまとめさせていただきました。
この記事が皆様の臨床、実習の一助になると幸いです。
読んでくれてありがとうございました!
この記事は↑の本を参考にしています。
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